NPO法人 地球のステージ
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更新: 2005年8月26日
 
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またまた侵攻:PART III 

< 2004年1月23日 >

 今日は第2期生が集まる日。今回の侵攻が終わってまだ間もない今、危険すぎて自宅に帰れない子どもたちが何人もいる。彼らは今どこに身を寄せているのだろうか。他の子たちも今この活動の場所に来る余裕なんてあるのだろうか。今日ははたして何人が集まるだろうか。私たちスタッフは彼ら全員の無事を祈りながら、ひたすら待っている。

私たちにはもう一つ心配があった。今日、子どもたちがここに集まってくれるとしても、私たちは彼らにまずはなんて言葉をかければいいのだろうか。彼らに何をどのように話せば良いのだろうか。例によって何も前振りもなく始まった侵攻のこと、壊されてしまった家のこと、頭を撃たれて今も重傷のビラールのこと。これらのことについて、彼らに無理にしゃべらせることはしたくないけど、かと言って、まるで何も起きなかったように接することも出来ない。決して初めての侵攻ではないとは言え、私たち自身もまだかなり戸惑っている。そのことを彼らが勘付いたら却って彼らも困ってしまうだろう。どうすれば、彼らに私たちの戸惑いがばれないように出来るか。彼らとどうやって向き合えば一番良いのだろうか。



< 女子 >

今日は女子のほとんどが集まってこないだろう、と私は予測している。金曜日はもともと女子は家の中で母親のお手伝いをしたり、下の子の面倒を見たりしなければならない日だけど、今回は侵攻で、家の中でしなければならない仕事がそれだけ増えているだろう。家に帰れなくて遠くへ避難してしまった子もいるかもしれない。それに、侵攻直後に娘が目の届かないところに行ってしまうことに反対する親もいるかもしれない。

指定の時間が近づくと、数人ずつ事務所に集まってくる。結局、女子20人中7人集まってくる。アイヤ、ヤスミーン、デゥア、ファーティマ、サマル、ハイファ、ワラッ。期待していた以上の、まずまずの集まりだ。みんな、疲れた表情をしているけど、元気そうで一安心する。

甘い紅茶を入れて、みんなでそれを飲みながらそれぞれの家の現状について話をする。アヤとワラッの家族は侵攻時にそれぞれの家から逃げて、今はなんとか親戚のところに泊まらせてもらっている。ヤスミーンの家族は侵攻時も今も自宅で住み続けているけど、今は2階にいることは危険過ぎるから家族全員1階で生活している。そして、家の大事な家具は全て親戚の家に預けて、いつでも逃げられるようにしている。彼女たちはみんな、ここ3日間電気と水道がまったく機能していない生活を送っている。

彼女たちに、欠席している女子のことを聞く。全員の行方を知らないが、分かる範囲で話をしてくれる。家が人形の家のように削られてしまったランダの家族はその後、家から逃げたけど行くところがなくて、仕方なく親戚が経営している養鶏場に敷布団と毛布を持って行って、今もそこで寝泊りしているらしい。ジハーンが住んでいる建物にはますます銃弾の跡が増えている。ウィサームの家は以前もブルドーザーに部分的に破壊されたこともあったが、今回の侵攻ではイスラエル兵が何人も家の中に入ってきて、「ここには必ず地下トンネルがあるはずだ」と言って床のタイルを全て剥がしていったという。だが、ウィサームの家にはトンネルなんてなかった。

彼女たちと1時間くらいこういった話をしていたら、1人が「今日はただしゃべるだけなの?」と尋ねてくる。「何がしたい?」と問い返すと、「レーベ(ゲーム)!何か楽しいことがしようよ」と言ってくる。他の女の子たちも深くうなずく。

大声で声を掛け合いながらゲームに夢中になっている彼女たちをみて、私たちスタッフは少しだけホッとする。この子たちはまだ笑うことを忘れていないで良かった、と思う。



< 男子 >

女子の活動が終わると、今度は男子のが始まる。男子はなんと、20人中15人も集まる。その中に、家をブルドーザーに完全に潰されてしまったアブデル・ワハーブもいることにびっくり。「結局家族とどこに移り住めたの?」と彼に聞くと、「今海外で働いている伯父の家が空いていたから、一時的に借りて住めることになったんだ」と言う。

彼らにも甘い紅茶を配って、「今、何について一番考えているの?」と聞いてみる。するとみんなが一斉に「ビラールのこと」と答える。皆、彼のことが心配で仕方がない。それはそう、仲間だもの。



男子の1人、イブラヒームが代表として、「みんなでビラールに会いに行こうよ!俺たちをガザ市に連れて行ってくれ!」と頼んでくる。彼らの気持はもちろん分からなくもないけど、ラファからガザ市に行くことはそう安易なことではない(ガザ南部とガザ市間の検問所が突然しまったりもするので)。それに今はビラールがまだ生死の間をさ迷っているというのに、とても彼らを連れて行ける状態ではない。

彼らは全員、ビラールに何が起きたのか具体的に話してくれる。彼が撃たれた時に一緒にいた男の子たちによると、「彼はM16(自動小銃)から撃たれたんだ」という。「M16だって、どうして分かるの?」と聞くと、当然のように「音で分かるさ」と言われる。(イスラエル軍がラファで撃つ弾はすべて鉄の銃弾。ゴム弾はもはや使われることはないと聞く)「ビラールを担いで車に乗せようとしていた時、一生懸命彼に話し掛けたんだけど、その時にはもう彼には意識がなくて一言も言ってくれなかったんだ」と話してくれる。

入院中のビラールへの想いをこめて、子どもたちが「早く元気になれよ!」というポスターを作っている。

彼らには皆、撃たれて死んでしまった家族・親戚・友人が少なくとも1人や2人はいる。彼らの何人かは自分自身が撃たれた経験もある。だから、ビラールが撃たれたことで死んでしまうかもしれない、という事実は皆分かっている。そして、仲間のビラールが死んでしまうかもしれないということは、自分たちもいつ同じ目にあって死んしまってもおかしくない、ということも、自ら知っている。

「今すぐは皆でお見舞いに行くのはちょっと難しいと思うけど、今回は私とガッサンが皆の代表としてビラールに会ってくるね。その時に、皆から彼に持って行って欲しいものはある?彼を励ますために、何か作ろうよ」と言ってみると、みんなが一斉に賛成、さっそく作業に取り掛かってくれる。5人一組で、それぞれ「ビラール、早く元気になれ!お前の無事を祈っているぞ!」と書いてある大きなポースターを作ってくれる。

私もビラールに何かを持っていきたい。日本的に考えると、こういう時は千羽鶴を作って持っていくのが望ましいところなんだろうけど、今日はさすがに間に合わないから、今回は16羽だけ作って糸に吊るしてみる。16羽、皆でビラールの16歳の誕生日を祝えますように、という願いを込めて。



完成した1つのポスター



こういう状況の中で暮している子どもたちとどう向き合って行けば一番良いか。答はなかなか出ない。私たちスタッフは誰一人とも心理学者でもないし、子どもたちと日々ぶつかり合いながら、戸惑いながら、試行錯誤して活動を続けている。でも、こういう大変な時にでも私たちの元に集まってくれる子どもたちを見ると、もしかしたら「彼らとどうやって向き合って行けば良いのか」ということより、とにかく彼らと向き合うこと自体が一番大事じゃないのかな、と思えてくる。一緒に笑って一緒に泣いて、この子たちと一緒の時間と空間を共有して、彼らが皆「自分は一人じゃない」と分かってもらうことが一番大事なんじゃないのかな、と思える。

来週もまた彼らが集まってくる。その時に、彼らと何を話そう。何をして遊ぼう。相変わらず戸惑いはあるけど、私たちは元気な彼らと会うのがいつも楽しみ。

そして、今は一緒にいられないビラールに、千羽鶴を作ることにしている。今のところ、折り鶴が178羽完成。残りあと822羽。ヤンチャで元気な彼をまた怒鳴り散らせる日を待っている。

パレスティナ事業関連
☆由美のラファ日記☆ ☆活動支援報告 桑山☆
・第1回 03.2.3〜
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