閉鎖 / 2003.02.19
今日はホットスポット(最危険地帯)、ラファとハインユニスに行ってきました。
これで二度目ですが,ケースの訪問と学校での心理テスト,そして病院です。
ケース訪問では,昨年からの激しい戦いの中で自分の娘を失い,7人いる子どもの4人に銃弾による怪我があるお父さんに会いました。
いずれも子どもたちが買い物に行っているときに撃たれたもので、その買い物に出した自分を責めていました。
そして、その娘を失ったとき、その子を自分の胸に抱いて死に絶えていくさまを思い出すたびに涙が止めど無く流れていました。
どれだけ話しても、なかなか薄れてくれないそのときの胸の感触や冷たくなって硬くなっていく娘のありさまを、どうしても受け入れがたく不眠と情緒不安定に陥っていました。
精神科医から薬をもらってのみ、少し落ち着いていましたが、そのお薬がまた高い。1ヶ月40ドルもするのです。
仕方なく、薬を飲み止めていましたが、気持ちは落ち込む一方で、インタビュー中も泣いていらっしゃいました。
確実に状況は人々を追い込んでいます。
さて、ラファからの帰路、例のチェックポイントに差し掛かりました。
大渋滞です。
イスラエル軍が道路を封鎖しているのです。
乗りこんだ乗合タクシーは、横道を抜けては行きましたが、まったく道路が封鎖されているので、動きが取れない列の中にはまってしまいました。
3時30分でした。
そこから延々と時間が過ぎていきます。
車内はすし詰め・・・。
赤ちゃんは泣き始め、隣のおばあさんは腰がいたくて泣き出しそうです。
明らかに4日前の戦車を爆破されたイスラエル軍のいやがらせ行為でしょう。
勝手に作った信号機を、これまた勝手に赤にしたり青にしたりです。
そのチェックポイントの上を走る道路はイスラエルの入植地へ行く専用のもので、その高架の下をパレスチナの道路が走っているので検問所を設けて、通る車をチェッ
クしているわけです。
その高架の上の車はすいすいと通り越えていきます。
しかしその下の道路は、武装した兵隊たちのトーチカから銃がこっちを狙っているのです。
赤信号を無視して進めば、撃たれることは間違いない緊張の地帯です。
5時を過ぎました。
まったく動く気配がありません。機嫌のよかった赤ちゃんも狭い車内に閉じ込められて嫌になったんでしょう、なき始めました。
この、普通のパレスチナの市民がいったい何をしたというのでしょうか。
何故に、こんな不自由を強いられるのでしょうか。
5時過ぎに一瞬信号が青に変わりました。ほとんど2時間ぶりです。
でも30秒で消えました。
そして15分もそのままです。みんなじっと待ちます。
また青になりました。
今度はものの15秒くらいです。
そして今度は20分もそのままです。
一瞬、ほんの一瞬青に変わって、また信号は消えました。
イスラエル兵がいたずらしているとしか思えません。
まだ若い、何もわからないイスラエル兵が、車内に女性や子どもがすし詰めになって苦しんでいる気持ちのひとかけらも分からないで、信号のスイッチで遊んでいるのでしょう。
腹のそこから怒りが込み上げてきました。
乗りこんだ1ボックスカーには、子どもだけで7人、大人は8人乗っています。
子どもはぐったりしてきました。
大人はいらいらしています。
一瞬信号が青に変わると、気持ちがぱっと明るくなります。
「やった!通れるかもしれない!!」
けれど、ふと気づきました。
そうやって私たちの心はイスラエル兵に操られていくのです。
本来人間には自由に行き来できる権利があるので、この信号はイスラエル軍が占領地に勝手に作ったものである以上、違法です。
それに従わなければ撃たれてしまうので、命を守るためにパレスチナの人々はやむなくそれに従っています。
けれど、いつ変わるとも知れない信号を待ちつづけていると、青になった瞬間に思わず期待してしまう「よかった通れる」と。
その瞬間、その人は誇りを捨てさせられ、イスラエル軍に心が支配されたことになるのです。
そうやってイスラエル軍は心理戦を仕掛けてきています。
不安と期待、そしてまた裏切り・・・それを繰り返すことで、パレスチナを弱らせているように思えます。
6時30分、信号が長く青になっています。
われこそはと押し寄せる車の波。
運転手は怒鳴り合い、いがみ合っています。
「違う、これはイスラエルに仕掛けられた心理戦なんだ。いがみ合ってはいけない」
そう思うと、どれほど悲しかったか。
本来いがみ合う必要のないもの同士が、イスラエル軍の違法な信号操作によって、いがみ合わせられているわけです。
パレスチナ人の言い争いをはじめてみました。
そのときです。
波のように押し寄せるクルマを一生懸命、誘導し、交通整理をしている3人の若者がいたのです。
一生懸命、我先にと行こうとする車を制止し、整列させようとしています。
まだ10代の若者です。
とっても感動しました。
運転手は怒鳴りながらも、その若者たちに従い、順番を守ろうとし始めました。
車はスムースに動き始めました。
パレスチナの勝ち。
いらいらさせられながらも、ちゃんと車の交通整理をはじめる若者の勝ち。
どんないやみな行為や嫌がらせをしても、イスラエル軍の負け。
彼らイスラエル兵はこの交通整理の光景を見ていないので、そんなふうには思わないでしょう。
けれど、そう、神様は見ているでしょう。
この困難の中で、自発的に交通整理をはじめる若者を見て、パレスチナの本当の意味での平和な生き方を見たような気がしました。
明日はテルアビブに出て出国です。
地球のステージが今後、どんな関わりをこのパレスチナにしていくのか、かなり見えてきました。
また報告します。
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