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いよいよ決勝だ。
大どんでん返しのチーム・ピールージー対チーム・アルゲ・バム。ピールージーがここまで上ってくるとは思わなかった。感動的な決勝戦となった。
ミランも、モジュタバも気分が高揚しているのか顔が赤い。
主審は桑山。この一瞬を収めたくて、ビデオカメラを持っての主審だった。
アルゲ・バムの監督、ベザッドさんが「10分ほど休ませてくれ。前の試合の疲れが残っている」といってきた。
3時10分、いよいよキックオフ。
最初から両チーム、ガンガン飛ばしてきた。ミランにはマークが付いている。やはり研究されていたか…。なかなかミランからモジュタバへのパスがつながらない。まず先取点はピールージーが入れた。がっかりするアルゲ・バムのみんな…まだまだぞ!
5分後、ミランからモジュタバへパスがつながりゴール!
同点で返した。すごい試合だ。
後半戦、とにかく疲れが両チームに見えてきた。動きが少し鈍くなってきている。やはり、20分ハーフはきついかなあ。今日は日中気温が上がってきたからな。
結局、1:1のまま引き分けた。なんとPK戦になった。こんな劇的な展開となるとは。
5人ずつ蹴る。もう一つ一つの開始の笛に力がはいっていく。モジュタバがその体格を活かしてゴールを守った。結局1人に抜かれたが、そのモジュタバが敵ゴールを唯一抜いた。
なんとPK戦も同点。この両チーム、大人も子どもも沸かせてくれる。もうゴールのまわりは人だかりがすごい。こんなに熱狂するとは!リーダーの加奈子さんもじっと見守っている。
あとはサドン・デスだ。
1人ずつ蹴って決まったらそれで勝利だ。
モジュタバ、まず守った。
ピーッ!
笛とともに、チーム・ピールージーがキック!
なんとモジュタバ抜かれてしまった!
1点先取された。ここでアルゲ・バムが入れなければ負けだ。
最後のかけは順番でアルゲ・バムのアスガーが蹴って、う〜ん、
敵に止められてしまった。
ピピーッ、決勝戦はチーム・ピールージーの優勝が決まった! |
決勝戦はPK戦にもつれこんだ
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アルゲ・バムのベザット監督は肩を落とした。そして、ピールージーのタヘール監督は、満面の笑みを浮かべ、大きな喝さいがコートに響いた。
長かったサッカー大会の事業が、この瞬間終了した。
表彰式。
みんなにプレゼント。主に文房具とジュースだ。またいつか、この大会をやりたいと、みんな口々にいいながら、またテントに帰っていった。ミランもよくやった。マークされて、なかなかその見事なドリブルプレーが披露できなかったかもしれないけど、この次は、作戦練って、ピールージーを勝ち抜こうな。
16時。NICCOのテントに帰ってきて、力が抜けた。ああ、終わった。こんなに一生懸命、スポーツに打ち込んだのは生まれて初めてだった。
桑野さんと抱きあって「終わったね。またやろうね」と言いあった。 |
アルゲ・バムは準優勝
カップを持つモジュタバ主将
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夕方、ミランを訪ねた。
小さな妹と弟、そして母親との4人暮らし。父親は地震で崩れた家の下敷きになって亡くなった。電気技術者だった。クルマも下敷きになり、一家はすべてを失ってしまった。
ミランは自分がサッカー、うまいことをちゃんと知っていて、やはり将来はサッカー選手になることを夢見て来た。けれど、この地震ですべてを失い、長男の彼は突然一家を支えていかなければならなくなってしまったのだ。
「将来は?」
「そりゃあ、サッカー選手になりたいけどね…。働いていかないとね」
ミランには現実が押しかぶさってきたのだった。
けれど、今回のサッカー大会の話を聞いて、ミランは途中で参加した。最初は遊びなんだろうと思っていたけど、モジュタバと出会った。初めて会ったのに、息が合って、パスをつないで最後はモジュタバがシュートするという連係プレーを編み出した。
「やっぱりサッカーっていい。友達も出来るし、頑張ると気持ちいい」
サッカー大会が、ミランにまた火をつけた。
ミランは練習の後半は必ずやって来て、他のチームの練習の時はキーパーを買って出たり、盗まれがちなボールの管理をしてくれていた。本当にサッカーが好きな少年だった。
明日、この地を離れる僕はミランに聞いた。
「今日楽しかった?」
「うん、もちろん!」
「将来は?」
「…、やっぱりさ、サッカー選手」
「がんばれよ」
「うん、ガンバルよ!」
「またやろうな」
「うん、ピールージーに勝つまでね」
ミランにボールを渡した。
「みんなと練習してね」
「わかった。今度はいつ来るの?」
「・・・わかんない」
「待ってるよ」
「わかった」
純粋な、会話だった。
こうして、僕たちにとってのサッカーは終わったのだった。 |
ミランの家族
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夜、NICCOテントでお別れ会をしていると、尋ね人がきた。今回優勝したチーム・ピールージーの監督、タヘールさんが立っていた。
「どうしました?」
「いや、お礼を言いたくて」
「いえいえ、おめでとうございます」
「ほんとうにありがとう」
何だか去りがたそうである。何か求めがあるのかと思ってアミーンに聞いてもらった。
「他に何か?」
「いいえ、本当に、本当にただお礼だけ言いたくて・・・」
タヘールさんはそういった。出来ていたチームの集合写真を渡すと、またお礼を言って、タヘールさんは帰っていった。
アミーンに、
「何かするべきだったかなあ」
と聞くと、
「いや、本当にお礼だけ言いたかったみたいだよ」
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戦い終わって
仕事が一つ終わっていった
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阪神淡路大震災の時、救援に入った長田区の人に言われた事を思い出した。
「何で同じ日本人やのに、あんたからモノを貰わんといかんのかなあ」
それは辛い言葉だった。
仕方ないとはいえ、配給は辛いものに違いない。でも配給は大切だから続けていく。それでも、時として人のプライドや自尊心をくじくこともあるのだろう。でも、タヘールさんは違った。ただお礼だけ、わざわざ言いに来てくれた。
それは、誇らしい、とっても誇らしい姿だった。
何もなくなってしまったこのキャンプの中で、自分でチームを作り、励まして、その子どもたちが優勝した。タヘールさんはその活動の中で励まされ、元気を貰い、自尊心を回復していったのかもしれない。
そんな流れの中での「ありがとう」なのだろうと、強く感じた。
だから何も求めない。ただ「ありがとう」だけを言いに来てくれたのだ。
とても感動的な出来事だった。
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